レ・ヴァン・デュ・カバノン Les Vins du Cabanon
ルーション地方の《伝説のドメーヌ》「ル カゾ デ マイヨール」。
その主たる畑は、息を呑むほどの断崖絶壁にあり、バニュルスの町を見下ろし、地中海の風をまともに受ける岩盤に、へばりつくように植えられたブドウの樹。それが「ワイン界の自然遺産」とでも言うべき、「ル・カゾ・デ・マイヨール」の畑です。
その遺産の番人を長らく務めていた「アラン・カステックス氏」は、2015年の栽培を最後にル カゾ デ マイヨールを次世代の若者に託して、その身を引きました。
「この急斜面での仕事が辛くなってきたからね。」
そう話してくれたアラン カステックスでしたが、その脚は、さながらアスリートのような筋肉に覆われ、サンダルでその急斜面を上がっていく姿からは、衰えは全くと言って感じられません。
「ワインは土壌だけでなく、畑の周りの環境全てで生み出される。与える影響は環境が70%で土壌は30%。」とアラン カステックスは語ります。
カゾ・デ・マイヨールはまさにこの環境に恵まれた畑を有していました。
暑く乾燥した気候、海からの風、強い香りを放つ野生のハーブ達の低木草、海から太古に隆起した厚い岩盤と薄い表土、急峻な斜面などワイン造りの環境としては最も過酷と言えるもの。
しかしこの場所だけでしか生み出せないワインがあり、彼はそれを求めてこの場所でワイン造りを続けていました。
「いいワインを造るためには、ブドウ栽培はきついものになる。だからせめて畑の場所は景色がいい場所がいい。」そう話していたアランも*人生の次のステージ*に進むタイミングがやって来ました。
カゾ・デ・マイヨールのワインには2つのシリーズがありました。
急峻な畑で生み出されたブドウからは、ブルゴーニュ型のボトルに詰められたワインを、そしてなだらかで標高も低い区画のブドウからは、ボルドー型のボトルに詰められたワインを手がけていました。
カゾ デ マイヨールを離れ、新たに「レ ヴァン デュ カバノン」というドメーヌを立ち上げたアラン カステックスは、この平滑な畑のブドウと近隣の友人からの買いブドウを加え、かつてボルドー型のボトルでリリースしていたシリーズのワインを造り続けています。
過酷な仕事に全身全霊を捧げていたアランが、もう少し肩の力を抜いた形で、人生を楽しみながらワイン造りを続ける、そういう姿が今後は見られるのだと思います。
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